プロ直伝e.maxとジルコニアどっちがいい?【患者も医院も喜ぶ】
はぁ・・・(ため息)e.maxとジルコニアの違いが上手く言えなくて契約をとれなかった
患者さんに「結局どっちがいいの?」って言われちゃった。どうしよう・・・(泣)
今回はこんなお悩みを解決していきますよ!ボクが前職で歯科医院を回っていたとき、チョクチョク耳にしたのが、この悩みでした。
歯科技工士なら『全く違うものじゃん!』と一刀両断するのでしょうが、医院の中の人からすれば、指示書を書けば出来上がる技工物の製法や性質の違いを知る場面は、なかなかないですよね?
ちなみに、ボクは
◆キャリア20年超えの現役院内歯科技工士(インプラント学会認定技工士)
◆スタッフ教育歴18年
◆管理職・製造・人事・財務・労務・営業・経営企画を経験
このような実績がありますので、どうぞ安心して読み進めてください!
医院スタッフセミナーやる度によく尋ねられたので、みんな知らない。だから心配しなくても大丈夫だよ!
結論からお伝えしますね
◆e.maxはガラスに近い素材であり、強度と透明感があるので、審美性(見た目)を重視したに症例に向いている
◆ジルコニアは強度がe.max以上に優れているので、機能優先の症例に向いている
*この記事でのジルコニアはフルジルコニアとします
結論は至ってシンプルですが、このあと、2つの素材の違いを説明しつつ、適応症例や禁忌症例(オススメできない症例)も一緒に解説していきます。
これがわかると患者さんに説明できるようになるだけではなくて、医院の売上も上がり、あなたの評価も上がります。つまり給料も上がる大きなチャンスです。
もしかしたら、『自費を進めるのは、ただ高いものを売りつけているのでは』と思う人もいるかも知れません。でも、それは違います。人の価値観は様々なので、『歯にはお金をかけてでも大切にしたいのに充分な説明がなかった・・・』と悔やむ患者さんも一定数いるのです。ボクはそんな声を患者さんから沢山聞いてきました。
価格が高いものだからこそ、充分な説明があって、その価値を医院も患者も理解し、合意の上で治療を進めていくことが信頼を勝ち取る何より大切なことです。
ここでしっかり学んで、患者さんに最適な提案をしつつ、あなたの評価を上げましょう!
e.maxとジルコニアどっちがいいかわからないのは何故?
そもそも何故こんなにも、e.maxとジルコニアの違いがわからない人が多いのか、その原因について掘り下げていきましょう
e.maxとジルコニアは共に白い歯である
まずは、両方とも全く違う素材でありながら歯の色に近いという特徴があります
共に取り扱いのある、歯科医師、歯科技工士なら素材の見分けはつきますが、その他の人が色だけで確認するのは難しいと言えます
患者さんに実物を見せても「どっちも一緒に見える」と言われてしまうくらいなので、非常に勧めにくく、色ではなく違う特徴を知ってないとトークがキツくなります(汗)
e.maxとジルコニアは同じセラミックである
e.maxを『オールセラミック』や『セラミック』という商品名で紹介している医院も多いです
結論、どちらも【セラミック】という大きなカテゴリーに入ってしまうのです
では、何故e.maxはオールセラミックと呼ばれることが多いのか。それはこれらの素材が登場してきた歴史の順番にあります
実は、e.maxよりもはるか昔からオールセラミックというカテゴリーは存在していました
ポーセレンの築盛によるオールセラミックやキャスタブルセラミックやエンプレスなどが挙げられますが、e.maxはそれに取って代わる素材だったんです
一方ジルコニアはe.maxとほぼ同じ頃に登場して来たのですが、広まったのはe.maxよりも少し遅かったので、セラミックでありながら、『ジルコニア』という素材の名前が使われているのです
e.maxとジルコニアは共に硬い素材である
どちらも天然歯よりも硬い素材でできています
でも両方硬いので、その硬さのメリットを説明しにくいですよね?
次章でお話しますが、素材そのものが『一般的なモノに例えると何なの?』と言えるようになると、患者さんの頭の中でイメージがグッと湧きやすくなります
徹底比較!性質の違いを表でわかりやすく解説
ここではe.maxとジルコニアの性質がどの程度違うのか1つ1つわかりやすく解説していきますね
それぞれの特徴を知ってもらう前に、また、患者さんにイメージしてもらうためにもe.maxとジルコニアを身近なモノに例えることが大事です。
硬さ
『硬さ』と一言で言っても解釈は様々なんです。例えば、叩いても壊れにくい硬さ、落としても壊れない衝撃に強いという意味の硬さ、表面を引っ掻いても傷つかない硬さなど・・・
「この素材硬いんですよ」と言っても相手の受け取る硬さの定義は、話し手のあなたと一致するとは限らないということです
ここでは2つの硬さの違いについて表にまとめました。わかりやすくするため、天然の歯を1とした時にジルコニアとe.maxが何倍になるかが一目でわかります
各項目について説明すると
●表面の硬さ・・・素材の表面が硬い=歯ブラシやスケーラーでのキズがつきにく く、プラーク(汚れ)が付着しないため、2次的な虫歯になりにくい
●ガマン強さ・・・押される力に対して、しなやかに曲がることで耐える力。高いほど壊れにくい
硬さについてより詳しく知りたい方はこちらを読んでみてください
安全性
口の中に入るので安全なのは大前提ですよね
結論から言うと、どちらも体には優しい素材です。
特にジルコニアはもともと医科で人工股関節の材料として、体内で安全という実績があって歯科に来たものなので、問題ないと言えます。
e.maxもガラスの仲間なので、日々ガラスのコップなどが体に触れて問題ないように、口の中に入れても現在のところ(登場から15年以上経ちますが)異常は報告されていません。
審美性(見た目の良さ)
見た目のキレイさ、ここでは天然の歯の色に近いという意味でつかいます。
百聞は一見にしかずなので画像でお見せしますね
上の写真を見れば分かる通り、e.maxとジルコニアではe.maxの方が圧倒的に天然の歯に近い色をしています。
もちろん症例によりこの差は変わりますが、e.maxのガラスに似た特徴は天然の歯の透明感を再現しやすいのです。
写真は歯科医院に許可を頂いてボクが造ったモノを撮っていただきました。
【メーカーも赤信号】e.maxとジルコニアの禁忌症例とは
e.maxもジルコニアも、どんな状態の歯にも使える万能選手というわけにはいきません
メーカーより「こんな症例には壊れちゃうから使わないでね」と禁忌症とされているケースがあります
ここではどんな症例に向かないのか素材ごとに見ていきましょう
ジルコニア
ジルコニアはe.maxに比べて禁忌が少ないです。キズもつきにくく、しなやかで耐久力もあるのでほぼ万能に近いですが、禁忌とされているのが1つだけあります
ブリッジのポンティックは2歯まで
3本以上歯がないところのブリッジには向きません。しなやかと言っても金属よりは劣るので、土台の歯(支台歯)同士の距離が長くなるほど、ポンティックにかかる負担は大きくなり割れてしまうことがあります
また、これはマニアックな理由で、製作上起きやすいことですが、ポンティック部は分厚いジルコニアの塊です。そのため『焼結』と呼ばれる工程で、その重さにより変形を起こしやすくなります
さらに、その分厚さ故に熱が逃げにくく、マイクロクラックという細かい亀裂が入ってしまい、壊れやすくなるリスクを上げてしまう可能性があるのです
つまり・・・ポンティックの部分が多いほど、冠の不適合が起きやすく、割れるリスクも高まるということです。
e.max
e.maxはジルコニアに比べると割れやすい素材なので向かない症例も幾つかあるんですよ
大臼歯を含むブリッジ
大臼歯を含むと噛む力(咬合力)に耐えられずに割れてしまうことがあるので、避けたほうが無難です。
4本以上のブリッジ
本数が多くなると、ブリッジにかかる力が増し、負担が大きくなります。4本を超えてくると、しなやかさに欠けるガラスのような素材のe.maxは割れてしまうことがあるので禁忌とされています
鈎歯
入れ歯の金具がかかる歯を鈎歯(こうし)と言います
これに該当する歯をe.maxにすると、ひねるような力がかかるので、ガラスのような素材は粘り気がないので割れてしまう原因になってしまうのです
応用編 素材別オススメな患者さん
今度は「ぜひ、あなたには、この素材で造った歯をオススメします!」とお伝えできる症例を挙げていきます
これをマスターできれば、最適な提案ができるようになり、患者さんのお口の健康を長く保つ事ができます。さらに、医院の売上も上がっていくので、提案力のあるあなたの評価は、急上昇していくこと間違いなしです
ジルコニアに適した症例
◆歯ぎしりがひどい方
◆「見た目よりも壊れにくいものがいい」という方
◆大臼歯を含む補綴
今まで紹介してきた通り、ジルコニアは非常に強度が高く、壊れにくい
なので絶対とは言い切れませんが、上記のような患者さんには冠が壊れて来院するようなことが減るという意味でもオススメできますよね
e.maxに適した症例
◆「壊れるのも嫌だけど見た目もキレイにしたい」という方
◆小臼歯部のインレー・クラウン
◆前歯部クラウン
e.maxは見た目重視で治したい患者さんにオススメの素材です
症例にもよりますが、独特の透明感が歯と馴染んで、自然な仕上がりになりやすいので、患者さんの満足度も高まります
まとめ
ジルコニアとe.maxの違いを性質などから説明してきましたが、改めてまとめましょう
◆e.maxはガラスに近い素材であり、強度と透明感があるので、審美性(見た目)を重視したに症例に向いている
◆ジルコニアは強度がe.max以上に優れているので、機能優先の症例に向いている
*この記事でのジルコニアはフルジルコニアとします
どちらがいいというものではなく、それぞれの特徴を理解した上で上手く提案できれば、患者さんも歯科医院も嬉しい結果が待っています
もちろん最後は担当医師の判断になりますが、これを読んでくれているあなたの知識の引き出しを増やすことにより、患者を救い、医院経営をも救う力を手に入れられます
そんなあなたを医院は必ず評価してくれるでしょう!